Shoji.【浜松】 Circulation Camp@天手古舞

By Shoji
トム・ソーヤーの冒険

10月のある朝、僕とNAOKIは浜松へ向かった。

僕が子どもの頃、マーク・トウェイン(Mark Twain)の
『トム・ソーヤーの冒険』に憧れていた。
近所の悪ガキたちと一緒になって、
大人の目からコソコソ隠れながら、
目の前の森の中に、よく秘密基地をつくったものだ。
そして、ハックルベリーフィンのツリーハウスにみたて、
その森で一番大きな木を見張り台にして喜んでいた。
秘密基地の近くを誰かが通る度に、
木の上から基地に指令を出し、息をのみこんで、
ジッと動かないでやり過ごしていた。

この頃の僕にとっては毎日が冒険に満ちていて、
この冒険が世界のすべてだった。

大人になるにつれて、
日常の日々こそ冒険だということを、
忘れていることが多かったような気がする。
歳相応のふるまいを演じたりもしている。

でも、今回の1泊2日の冒険キャンプは、
大の男2人を心底楽しませてくれた。
僕をトム・ソーヤーにし、
友人であり素晴らしいヨギーサーファーでもある
NAOKIをハックルベリー・フィンに変えていく。

朝3時に出発。
サーフボードとキャンプグッズを車に詰め込み、
東名を西へ西へ突き進む。
途中のサービスエリアで腹ごしらえ。
「静岡特産黒はんぺん」と「しらす丼」を食す。
目まいがするぐらい食いすぎた・・・。
波情報をチェックすると、どこもかしこもパッとしない。
流れに身をまかせ、7時前に静波に到着。
波はヒザ程度、でも僕たちはユトリの塊。
ボーッと波に漂いつづけ、
あっという間に3時間経過。

昼過ぎには夜のメイン会場に到着したいので、
すぐに着替えて、食材の買出しに向かった。
なかなかスーパーが見つからず、
地元の人に尋ねながら、ときにはからかわれながら、
あてのないスーパー探しが面白かった。
「あんたらこんなとこに何しにきたの~」と、
野菜売場のおばちゃん。
「高速道路が1000円だからでっしょ?」と、
買い物に来たおばちゃん。
笑う目じりのシワがとても美しく温かい。
僕も、こんな表情ができる歳の重ね方をしたい。
ほのぼの。

どうにかスーパーを見つけ出し、
買い物を済ませたころには、
雨がポツポツと降り出していた。

まわりの景色も緑が豊富になり、
赤や茶色といった秋色もチラホラ混ざっていた。
車はどんどん山道を進む。
山の空気はみずみずしい、身体にしみる。
携帯電話の電波も入らない山奥。
次第に車幅が狭くなる。
ぐねぐね道と車内に流れるスローな音楽に合わせ、
まるで車が踊っているかのようだった。
僕たちの心、わくわくドキドキが
そのまま車にのりうつっているかのように。

午後1時、かなり早めの現地入り。
だが、急に天気は大荒れ。
どしゃぶりの中、カッパを着て、足元泥だらけで設営!!
荷物の搬入と合わせ、2時間以上雨に打たれ続けた。
頭から足のつま先までビッチョビチョ。
ここまで濡れるとふんぎりがつくもんだ。
子どもの頃は、こんな泥まみれも抵抗なかったはず。
そんなことを想い帰すと、
この状況に感謝さえ抱くから不思議だ。

無事テント完成!!
と同時に、あららら奇跡の雨上がり。

澄んだ空気は景色を色濃く映す。
肺の奥まで身体が満たされる。
イスに腰掛け自然の一部を実感することが
こんなにも気持ちいいものかと、
あらためて感じることができた。

夕日が次第に空を赤く染め、
僕たちを神秘の闇へ誘いはじめた。

夜はまどろむ。。。

翌朝は快晴。
まわりの参加者たちは、
各々自分の時間を感じ続けている。

僕たちは、出店されていた
美味しいひよこ豆カレーをたらふくたいらげ、
浜松の波を求めて、その場を発った。
荷物の搬出に3時間を要したが・・・。

その日の夕方、
日が沈む直前30分だけ、浜松の波に乗ることができた。
真っ赤な夕日の中で、
僕たちは、この日常を確かなものにしたかったのだと思う。

世界はテンテコマイでおもしろい。

なんだか自分が昔とちっとも変わってなくて、
それどころかかえって悪くなっているような気さえして、
自分ばかりそんなこと考えているかと思えば、
僕のまわりもけっこうそんなことを感じている。

過去、現在、未来。
「子どもの頃は・・・」、「大人になれば・・・」
「明日には明日の風が吹く」、
そんな時間の区切りなんてぜんぶ嘘っぱちで、
すべての時間はひとつなぎだって思えてきた。
子どもの頃に生きた世界は、今この瞬間の延長で、
未来は、今を生きる希望の自分の延長で、
だからこそ、今を大切にしなければって。
なんでもない日常のこの瞬間を、明日という日を、
歩めるために。

天手古舞幻想世界!
僕らは、森の中ではしゃいでいた頃の自分と、今も遊んでいる。

最後に、このイベントをオーガナイズされた関係者の皆様、
本当にありがとうございました。
感謝!感謝!

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