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インド。
2年程前に訪れて以来の渡印。
インドは僕にとって、初めて足を踏み入れたアジアでもある。
あのころの僕にとって、インドは「リアル」を意味していた。
埃まみれの空気と人間、つかみどころのない欲望、生と死の境界、
死をあまりにも赤裸々に見据える人々の暮らし。
そこには時間も場所も超越する、
人間の「生きる」ことへの手ごたえが、
つまり今この瞬間が深く刻まれる。
明日はシンガポール経由でインドへ発つ。
旅の荷物はコンパクトに限る。
しかし、いつも旅支度の直前までは、
あれも持っていこう、
これも必要だに違いない、
こんな思いが頭によぎる。
こんなとき、僕はいつしか読んだ本の一説、
アウトドア・イクイップメント、野上氏の言葉をつぶやく。
まず捨てるものは「必要かも」という「かも」がつくものからだ。
あの「かも」も必要ではない。
この「かも」も絶対ではない。
そしてひとつずつ捨てていくと、
終にはポケットの中まで空っぽになり、
かわりに僕らは自由を手に入れる。
本当に必要なものは、なんと少ないことか。
そんなことを教えてくれるのが旅だ。
そして、ウルフギャング・アメディウス・メイベル男爵の
言葉で結んでいる。
「旅とはなにを持っていかないかという策略のことである」
それは、いつものヨガ、呼吸と同じ。
吸ったら吐く。
深く吸いたいならば、深く吐く。
まさに生きること、旅。
僕はこの旅でなにを手放し、なにを手に入れるのだろう。
飛行機の出発まであと5時間。
僕の荷物は、サーフボードと借りた本。